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浅川の河床では、地下に浸透した雨水が地層の傾きや地盤の構成によって導かれ、やがて時間をかけて地表へと湧き出している。こうした局所的な水の流れは、単線的な時間感覚では捉えきれない、滞留や偏在を含んでおり、土地そのものの構造と深く結びついている。
八王子という都市の周縁において、現代美術がどのように姿を現すのか?この時間の非対称性とずれ、あるいは「遅れて表面へと染み出す」構造は、ひとつの思考の足がかりになるでしょう。
「八王子芸術祭」は、二年に一度、八王子市内の異なる地域を舞台に開かれる、小規模ながらも継続的な芸術祭です。十年という時間をかけて、市内各地に芸術の因子を芽吹かせ、土地を耕し、市民の生活や活動の醸造を願う取り組みです。
今期の開催地である中野上町や小宮、大和田、石川といった地域には、かつて養蚕や織物といった産業を軸とする暮らしの文化が根付き、今日では製造業を初めとする産業が日常とともにあります。この芸術祭では、そうした地域の物理的な場だけでなく、そこに蓄積された歴史や文化を「経(たて)」の糸のように受け止め、個人の思考が「緯(よこ)」の風のように通り抜けることで、過去と現在、土地とまなざしが交差する場を立ち上げようと試みています。
美術における普遍的な問いかけ——「表現とはなにか」「見るとはどういう行為か」——は、この土地でどのように根ざすのか。アーティストの手つきと、日々の生活の中で育まれるスケールとが交差することで、新しい解釈や経験が蓄積されていくでしょう。それらの集積は、展示として一時的に立ち現れるのではなく、地域のなかで時間をかけて語られ、やがては対話を通じて血肉化される。そんな思考のプロセスへとつながっていきます。
萌す風は、一瞬で吹き去るものではなく、遅れやずれを含みながら、芸術実践の価値を都市の縁辺に静かに根付かせていくと、私たちは考えています。
キュレーター:田坂和実、原ちけい
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Arts
歴史・文化・自然に触れながら制作されたアート作品を旧工場跡、古民家、屋外施設、野外公園などで一般公開します。アーティストによるワークショップやトークイベントも開催予定。
※作品はイメージです
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Music & Theater
まちに耳をすまし、地域に流れる音や物語にそっと心を寄せる。そんな想いから生まれた音楽や演劇が、この土地との対話を紡いでいきます。